Q.遺言の方式について教えてください。
遺言には厳格な方式が定められており,方式に従わない遺言は全て無効となってしまいます。
遺言の方式(普通方式)には,以下の3つの方式があります。
※普通方式以外に,普通方式によって遺言することが困難又は不可能とする特殊な事情がある場合に限り認められる簡易な方式である危急時遺言・隔絶地遺言という特別方式の遺言があります。
① 自筆証書遺言
- 遺言の内容の全文,作成した日付,氏名を全て遺言者が自筆で書いて押印することにより作成する遺言です。
- ワープロでは無効となります。全て自書が必要です。
- 内容の訂正は,訂正した箇所に押印をし,どこを訂正したかを付記して署名します。
【留意点】
◎この自筆証書遺言は,遺言者が死亡し,その遺言書を見つけた方は遅滞なく家庭裁判所に遺言書検認の申立をする必要があります。
※遺言書検認手続について
→公正証書以外の方式により作成された遺言書は,全て検認手続を受ける必要があります。
※遺言に封印がしてあるときは,家庭裁判所で相続人等の立会いのもとで開封します。勝手に開いてはいけません。
◎いつでも自由に作成でき,費用もかかりませんが,方式の不備や内容に不明確なところがある場合,遺言が無効になったり,相続時に紛争のもとになる恐れがあります。
② 公正証書遺言
- 遺言者が,公証人に遺言の内容を述べ,公証人が文章にまとめて公正証書を作成するものです。
- 遺言書作成時に2人以上の証人(相続人・受遺者等以外の第三者)の立会いが必要です。(適当な証人がおられない場合は,当事務所に遺言書作成をご依頼の場合,こちらで手配させて頂きます。)
- 公証人へ支払う手数料が別途必要です。(財産の価額により算出されます。)
- 遺言者が公証役場に出向くことが困難である場合は,自宅や病院まで出張してもらうことも可能です。(別途日当が必要です。)
- 公正証書遺言の原本は公証役場で保管されます。(正本,謄本は遺言者に交付されます。)
【公正証書遺言の利点】
- 公証人が作成するため,方式の不備などで遺言が無効になる恐れがありません。
- 遺言者が自書できない場合にもでき,家庭裁判所で遺言検認の手続を経る必要もありません。
- 原本が公証役場に保管されますので,遺言書の紛失や偽造の心配がありません。
【公正証書遺言作成の準備】
- 遺言者の財産についてまとめます。不動産がある場合には,登記事項証明書と固定資産評価証明書が必要です。
- 遺言者ご本人の印鑑証明書や,遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本等を用意します。
- 証人の方の氏名,住所,生年月日,職業をメモしておきます。
- 遺言執行者を指定する場合は,遺言執行者を決めます。
遺言書作成について当事務所へご依頼の場合,上記の必要書類の収集や,相続人の確定(相続関係図の作成),財産目録の作成はこちらでさせて頂きます。
依頼者の方から詳しい事情を聞き取ったうえで遺言書(案)を作成し,協議の結果,遺言内容が確定しましたら,公証役場において,遺言を作成します。
③ 秘密証書遺言
- 遺言者が遺言内容を誰にも知られたくない場合に使われていますが、実際にはあまり用いられていません。
- 遺言者が遺言書(ワープロでも可。但し,署名,押印は遺言者が行う。)を封じ,遺言書に押印した印鑑と同じ印鑑で封印します。そして,それを公証役場で公証人と証人2名以上の前に提出し,公証人に自己の遺言書であることを証明してもらうものです。(封筒に提出の日付,遺言者の申述が記載され,遺言者,公証人,証人の署名,押印がなされます。)
- 公証役場で保管はされません。
- 遺言の存在を明確にしつつ,封印後に公証人と証人に提出するため,遺言内容は誰にも知られず秘密にできますが,遺言書の内容について公証人が関与しないため,遺言内容に法律的に不備がある場合や,内容について争いになる場合があります。
- 自筆証書遺言と同様に,家庭裁判所での検認手続が必要です。
以上のとおり,遺言の方式はそれぞれ厳格に定められています。
せっかく遺言を残しても不備等があると遺言者の意思が反映されないことがあります。
法律的に有効な遺言書作成のために,また,なるべく遺言者の方の思いに沿う形になるように,状況に応じてアドバイスをさせて頂きますので,いつでもご相談ください。