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Q.最近父が亡くなりました。既に母は他界しており,相続人は兄と妹である私です。遺産は,不動産と預貯金や株式等の金融資産があります。遺産分割の話になった時,兄からすべての遺産を自分に相続させる旨の遺言書があるからお前には相続する遺産はないと言われました。遺言書がある以上,私は遺産を相続することができないのでしょうか。

 

遺留分侵害額請求権を行使することにより遺産を取得することが可能です。
詳しく見て行きましょう。

 

●遺言がない場合
まず,本件において遺言がない場合,相続人の法定相続分は下記のとおり2分の1ずつとなります。

●遺留分
本件では,兄にすべての遺産を相続させる旨の遺言がありますが,配偶者,子,直系尊属には法律上遺留分が認められており,そのような遺言があったとしても,下記のとおり遺留分に相当する遺産を請求することができます。
遺留分の割合は2分の1です(直系尊属だけが相続人の場合は3分の1)。

●遺留分侵害額請求権
遺留分侵害額請求権は,改正前は遺留分減殺請求権と呼ばれていました。
遺留分減殺請求権は,権利を行使すると,相続人間で複雑な共有状態となり,遺産の処分や事業承継等に支障が出る事態も発生するデメリットがありました。

遺留分侵害額請求権では,遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることができるようになったため,旧法のデメリットはなくなりました。
本件でも,遺留分侵害額に相当する5000万円を兄に請求することができます。

遺留分は,兄弟姉妹以外の相続人が最低限の遺産を相続することを保障した制度です。
ご相談をうかがっていると,遺言書があるのに遺留分を請求してよいのだろうかと悩まれる方もいらっしゃいますが,遺留分は残された相続人の生活を保障するため法律上認められた最低限の権利ですから,請求してはならないということはありません。
なお,遺留分侵害額請求権は,遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈を知った時から1年間行使しないときには時効消滅することになりますからご注意ください(相続開始の時から10年間を経過した場合には除斥期間の経過により消滅します)。

上記のとおり,遺留分侵害額請求権は,相続人の生活を保障するため法律上認められた最低限の権利ですから,簡単に請求を諦めるべきものではありません。
当事者で話し合いができないのであれば,弁護士に委任する,家庭裁判所に調停を申し立てるなどできる限り第三者が関与する形で交渉を進めるのがよいでしょう。
将来的にやっぱり請求しておけばよかったと後悔しないよう諦める前に一度は弁護士に相談してみてください。