遺言は財産承継を目的とするものであり,家族信託は財産承継と財産管理を目的とするものです。両制度は,この財産承継という点で共通します。
では,両制度はどのような点で違いがあるのでしょうか。
まず,遺言では,配偶者に相続させた不動産を,配偶者の死後,前妻との間の子に相続させるいった「後継ぎ遺贈」は民法上できないと考えられています。
一方,家族信託では,上記「後継ぎ遺贈」と同様の効果を実現できる信託を設計することが可能です。
次に,遺言は,本人(遺言者)の死亡時に効力が発生するため,例えば親の生前から,息子に財産管理を委ねるようなことはできません。
一方,家族信託では,信託契約により,息子を受託者として不動産の管理を委ねることも可能です。
さらに,遺言では,財産を一括して承継することになります。
一方,家族信託では,信託行為(信託契約,遺言による信託)の定めにより,①財産を一括して承継することも,②分割して承継することも可能です。
また,遺言は後に作成されたものが優先し,いつでも撤回可能なのに対し,家族信託では,信託行為(信託契約,遺言による信託)の定めにより,撤回不能とすることも可能です。
なお,認知や後見人の指定など身分行為について定めることは遺言ではできますが,家族信託ではできません。
遺言と家族信託の違いを簡単にまとめると下記のようになります。
遺言と家族信託のいずれを利用するのがよいかは事案ごとに異なりますから,一概にどちらの制度の方がよいとは言えません。まずは,どのような目的で財産の管理や承継をしたいのかを弁護士に伝えて相談をしてください。
●遺言と家族信託の比較
遺 言 | 家族信託 | |
制度の目的 | 財産承継 | 財産承継 財産管理 |
効力発生時 | 本人の死亡時 | 遺言による信託 →本人の死亡時 契約による信託 |
財産の承継方法 | 財産を一括して承継 | 信託行為(信託契約,遺言による信託)の定めにより,財産を一括して承継することも分割して承継することもできる |
財産の承継するタイミング | 本人の死亡時 | 信託行為(信託契約,遺言による信託)の定めにより, ①本人の生前 ②本人の死亡時 ③本人の死亡後 |
撤回の可否 | いつでも撤回できる | 信託行為(信託契約,遺言による信託)の定めにより,撤回不能とすることもできる |
遺言と家族信託について,さらに詳しくお知りになりたい場合は,下記ページをご参照ください。
(遺言・相続について)
→ https://www.kobe-hidamari-law.com/consult/testament/
(家族信託)
→ https://www.kobe-hidamari-law.com/consult/senior/892/